第8章 恋柱
「ご馳走さまでした~!じゃあ片付けちゃうので、そのままにしててくださいね」
立ち上がりながら、話しかける。すぐに目の前の茶碗やお皿を重ね、持っていく。残りを持ってこようと振り替えると、実弥さんが持って来ていた。
「皿位、持っていける。元々全部してたんだ。これくらいはする」
ぶっきらぼうな言葉だが、とても優しいのだ、実弥さんは。ちょっと恥ずかしいのか、顔を反らしているところも、実弥さんらしい。
まさかの申し出に、嬉しくて自然と顔が緩んでいくのが自分でも分かる。
「ありがとうございます。とっても助かります。じゃ、ここで食べたときはお願いできますか?後は今まで通りですけど」
「あぁ」
皿を受け取ると、実弥さんは部屋へ戻って行った。
台所に小さな机と椅子を置いて貰って正解だった。
一人の時は部屋まで戻って食べるより、台所で食べた方が早いし、正直言うと、畳での生活は慣れたが、やはり苦手だ。椅子に慣れてた現代人としては、椅子の生活が便利だと知っている。
実弥さんに最初お願いしたときには、ものすごく変な物を見るような顔で、何で必要なのかと問い詰められた。だけど、ここに机と椅子があれば、家事もこなしやすい。
いる、いらない、をなんども言い合った…
でも結局実弥さんはこう言った。
「好きなようにしろォ」
きちんと理由があれば、何だかんだ好きなようにやらせてくれる。
突然やって来た見ず知らずの私を、お館さまの意向もあるけれど、居候させてくれている。それだけでも、本当にありがたい限りだ。
それなのに、毎日甘味屋には行くし、服を作り始めるし、今日は知っていたとは言え蜜璃ちゃんを屋敷に連れてきちゃったし…。
怒られても仕方ないのに、許してくれている。
それはやはり、実弥さんの優しさなんだと思う。
その優しさに甘えすぎてはいけない。
私も何か実弥さんの役にたたなければ、と思うのだった。