第8章 恋柱
残りの卵焼きも作りあげ、実弥さんのお皿に全部載せる。
「さぁ、これで全部です。しっかり食べて、鬼狩りに備えてくださいね」
「お前も座れェ」
「まだ片付けが残ってますから。実弥さん、好きなだけ食べてください」
「片付けは後からでもできるだろォ。本当全部食べちまうぞォ」
「実弥さんのために作ったんですから、全部食べてください。私は気にしなくていいんですよ」
「何度も言わせるなァ!」
「はいはい。分かりました」
段々と口調が厳しくなってきたので、実弥さんの言う通り、ご飯と味噌汁を準備して、椅子に座る。
「一緒に食べるのは久しぶりですね。椅子に座って食べるのもいいでしょ。お店みたいだし。台所がすぐだから、準備も片付けも楽なんですよ」
「…あぁ。それは間違いないなァ」
「実弥さん、ありがとうございます。いつもわがまま言ってごめんなさい。でも、またわがまま言っても、許してくださいね~」
笑いながら伝える。
「笑いながら言うことかァ、お前は…」
いつもの呆れ顔の実弥さんが言う。
実弥さんはよく呆れた顔をする。
間違いなく呆れられてるから、その顔になってしまうのだろうけど…
他の人には見せない顔に、いつも嬉しくなる。
「ごめんなさい。でも、本当まだもう少しここで居候させて頂かないといけないと思うので…よろしくお願いしますね」
「……仕方ねェ。でも、これ以上厄介事はやめろォ」
「はぁい」
たくさん作った卵焼きはすぐになくなった。
やっぱり温かいものは格別だ。
それに、誰かと食事を食べるのはいい。いつも一人だから、やっぱり寂しくないと言えば嘘になる。
今までは大人数に囲まれていて、わぁわぁ言いながら食べていた。
一人には慣れたが、誰かと食べるとやっぱり嬉しくなる。
「どうしたァ?ニヤニヤしてるぞォ」
言われて、顔が緩んでいたことに気づく。
「誰かと食べるのは、やっぱりいいなぁと思って。たまにでいいので、また一緒に食べてくれますか」
「……あぁ」
「良かった~。また食べれる時は声かけてくださいね。私はいつもここで食べてますから」
実弥さんの顔を見ながら言う。
ん、と小さな声が聞こえた。