第8章 恋柱
「蜜璃ちゃんのお話、ずっと聞いてましたよ。色々な事が聞けて、楽しかったです。実弥さん、ありがとうございました」
「あぁ?何でだ?」
「蜜璃ちゃんに会ってくれて。それにまた遊びに来ても良いって言ってくれました。居候させて貰ってるのに、ご迷惑ばかりかけてごめんなさい。でも、色々させて下さってありがとうございます。感謝しかないです」
「アァ?お前は居候だが、そんなに気にしなくていい。それに甘露寺は煩いが、悪いやつじゃねぇ。まぁ、馬鹿なお前とは合うんじゃねぇかァ」
腕を組みニヤニヤしながら見下ろされる。
「もうっ。私は馬鹿じゃありません!たまにおかしい言動をするだけです」
「それを自分で言う時点で馬鹿なんだよォ。自覚してるじゃねぇかァ」
「うーっ!じゃ、馬鹿でいいです。お馬鹿なノブは、今日の夕食は卵焼きを作るけど、実弥さんの分を作るのを忘れます!あと、おやつのおはぎも間違って食べちゃうんです~!」
結局言い返せない事がちょっと悔しくて、横を向きながら精一杯の意地悪を言ってみる。
「おい、ノブ!何だ、それはァ!」
「…せめてもの抵抗です…」
横を向いていた顔を元に戻しながら、実弥さんの顔を見ると若干怒りぎみ。
不貞腐れた感じで言ってみたものの、その顔を見ると我慢できずに笑ってしまう。
「ぷっ。ハハハハ。何とか思い付く意地悪言ってみたんですけど、ダメですね。ご飯食べてくれると幸せだから、我慢できません。卵焼きとおはぎ出しますから、ちゃんと食べてくださいね」
「結局、何なんだ。お前はァ」
「うーん。実弥さんが大好きって事ですよ」
おもいっきり笑顔で答える。
「……お前、やっぱり馬鹿だろォ。何で今の会話の流れで、そうなるんだァ。もう、これ以上話してても意味がないなァ。甘露寺といい、お前といい、話しても疲れるだけだァ」
呆れ顔で実弥さんは言う。顔はもう明後日の方を見ているようだ。
「さぁ、ご飯の準備しますね。時間も遅くなったから、簡単に作っちゃいますね!大丈夫!ちゃんと卵焼きも作りますから」
そう言いながら、実弥さんの横をすり抜け、台所に向かって歩き出す。