第8章 恋柱
怒鳴られる事はあまりないので、少し驚いたが、実弥さんの目を見て話す。
「実弥さん、私がここに来て初めてできたお友達なんです。何もない私にとっては、すごく嬉しいことなんです。何も知らない私の事を心配して、この家まで来てくれたんです。そんな優しい方だから、これからも仲良くさせて貰いたいと思っています。この家にも来て貰いたいと思っています。だから、居候させて貰っている以上、実弥さんにそのお友達に会って頂きたいんです。実弥さんにも確認して頂きたいんです。もし会って貰って、ダメだと思う方でしたら、これ以上のお付き合いはやめます。なので、お願いします」
話終わると同時に、深々と頭を下げる。長い沈黙の時間が流れる。
「…分かったよッ!見るだけだぞ!話しはしねぇ。見てダメだったらすぐ帰らせろォ。分かったな」
実弥さんを見上げると、顔はそっぽを向いている。ああ、やっぱり優しい人だ。
「ありがとうございます!じゃあ、行きましょう。だいぶお待たせしてますから」
実弥さんの腕を掴み、引っ張るような形で廊下を歩く。
「実弥さん、驚くと思いますよ。とっても可愛らしい方ですし」
「興味ねぇ」
「いや、間違いなく驚くと思うんです」
「はぁっ?お前、ちゃんと人の話、聞いてるかァ?」
そんなやり取りをしながら廊下を歩いていると、心配になったであろう蜜璃ちゃんが客間から顔を出す。
「ノブちゃん、大丈夫?えーーーっっ??!!し、不死川さんっっ???!!!」
「あ゛ぁーーッ!!お前、甘露寺ッ??」
二人とも顔を見合せ、動きが止まる。思った以上に二人とも驚いていて、それを見れた私は得した気分だ。驚き固まる二人の間で、にこにこしながら話す。
「やっぱりお知り合いでしたか」
「えー??ノブちゃん、何で~?」
「おい、説明しろォ」
「いえ、蜜璃ちゃんの着ているお洋服が実弥さんの隊服と似ていたので、鬼殺隊の方かなぁ、と。後ろに殺の文字のある服は普通着ませんし。あと、実弥さんは柱なので、蜜璃ちゃんが隊士であれば知っているかとは。まさか実弥さんが蜜璃ちゃんをご存じだとは」
「こいつも柱だよ」
「蜜璃ちゃんも?」
うん、知ってました。でも、それを言うわけにはいかないので、知らなかった振りだ。