第8章 恋柱
「華子さん、お疲れ様でした。こんな時にすみません。おはぎは残ってますか?」
「大丈夫よ。ちゃんとその分は残してあるから。待っててね」
机の上に重なる皿をお盆にのせ、再び店の奥へ入っていく。
「ノブちゃんはおはぎが好きなのね」
「はい。でも、私の一番はあんこなんです。おはぎは居候先の方が好きなんですよ」
「あら、居候してるの?」
「色々とありまして…でも、居候先の方はとっても良い方なんですよ」
詳しく話せないので、こんな言い方になる。
「なら良かったわ。でも何か意地悪されたら、言ってね。私が助けてあげるから。こう見えて私結構強いのよ!」
「ありがとうございます!でも、居候先の方もかなり強い方なので、多分無理かと…。蜜璃ちゃんが怪我しちゃいますよ」
「えーっ!余計気になるわ、その居候先の人。何してるの?何か意地悪されてもノブちゃん、助けを求められないじゃない」
なぜか蜜璃ちゃんの中で、居候先は意地悪をされると思い込んでいるようだ。実弥さんは意地悪をすることはないと思う。
「いやー、うちの居候先の方は優しい方なので、意地悪はしない…筈です」
「ノブちゃん、今から家まで一緒に行っても良いかしら?ノブちゃんのお家を知っとかないと助けに行けないし、居候先の人も見とかなくちゃ!」
おいおい。大変な事になってきた。このまま蜜璃ちゃんを連れて帰ったら、実弥さんもビックリだけど、多分蜜璃ちゃんの方がビックリするに違いない。
実弥さんとしても、私が居候していることは知られたくはないだろうし…。ここは丁重に断らなければ!
「蜜璃ちゃん、大丈夫だから。居候先は蜜璃ちゃんが思ってるより、いい人だから。ね、大丈夫よ」
「ノブちゃんがそう思ってるだけかもしれないわ。せっかくできたお友達だから、ね。お家を知らないと、なかなか会えないし。さぁ、行きましょ」
「待って待って!まだ、おはぎ貰ってないから」
私の手を取り、店の外に出ていこうとする蜜璃ちゃんを何とか止める。
間違いなく、力では負ける。蜜璃ちゃんが何か思い込んでしまっているので、もうどうしようもない。
おはぎを受け取り、蜜璃ちゃんに引っ張られながらあるく。もうどうにでもなれと、目は遠くを見つめながら屋敷に戻ってきたのだった。