第2章 暗闇からの光
私のことを怪しい奴だと言っていたが、実弥さんはゆっくりと体を起こしてくれた。
今は体育座りの状態だ。
少しふわふわした感覚が残るが、痛みも我慢できないほどではない。体もなんとか動きそうだ。
それにしても、実弥さんから体を触れられた時には、まるで十代の乙女かと突っ込みを入れたくなる程、ドキドキと動悸が止まらなかった。
まだ動悸がしている。
全く喋らない私に実弥さんは優しく話しかけてくれる。
「本当大丈夫かァ」
これ以上喋らないと、本当に怪しまれる。
「大丈夫そうです。少しふわふわしていて、体が動かしにくいですけど」
「ところで、お前、家はどこだ。何でこんなところで倒れてやがったんだァ」
ふと、思う。なんと説明すればいいのだ。
未来から来ましたではもちろんダメだし、いや、本の世界にやって来たもダメだ。未来でもないし…などと、また考えがぐるぐると回る。
「家は…どこでしょうねぇ。私は何でここにいたんでしょうか?ここはどこなんですか?」
もう、本当にここはどこなんだ。どうなっているのか、誰か説明してほしい。
「オイオイオイ。俺が聞いてるんだが。ここは俺の屋敷の前だ。家はどこだァ。連れて帰ってやるから、正直に言え」
「本当に家がどこか分からないんですよぉ!」
言っているうちに涙が出そうになったが、グッと堪える。
「ハァァッ?家が分からねぇって、どういうことだよォ。名前は?名前は分かるかァ。何でもいいから、覚えてることを言ってみろォ」
「名前…名前はノブです。三井ノブです。年は40歳で…」
と言ったところで実弥さんから突っ込まれる。
「おいおい。四十はないだろう。どう見ても俺より年下だ。よくて17,8歳ってとこだろうよォ。変な嘘はつくなッ!」
「えっ。いや、本当に40歳ですよ。もうおばさんですよ」
「いやいや、あり得ねぇ。名前は間違いないのかァ」
「えぇ?!名前も信じてもらえないんですかぁ?」
全く信じてもらえないことに驚きつつも、実弥さんも私が言ったことに驚いている。
どう考えても、私が17,8歳だなんてお世辞でも見えないぞ。
でも、実弥さんがこんな時にこんな嘘を言う訳はない。何かおかしいかもしれないと、考えはじめていた。