第13章 宇髄天元
「これまでの隊士は山中の様々な場所で戦闘の末に亡くなっていたという情報から、知らぬ間に術中にはまるというよりは、戦いの中で術を出すのではないかと思われます。私の戦闘の中でその辺りも見極めて頂けると思います。」
は山の地図を見ながら説明する。
「状況もよく分析できているな。しかし、俺は一つ気になることがある。」
「と、申しますと?」
「、お前の階級だ。今回はおそらく十二鬼月だ。戊の隊士がきちんと囮に成り得るのかって所だ。」
「まぁ、でも、が稀血ならどの道そうなるだろうな。お前の覚悟は伝わった。なるべく近くにいるから、距離を取って戦え。稀血のお前が喰われるなよ。命が危ういと思ったら潔く引け、作戦を立て直す。」
「承知致しました。」
日が暮れる頃、は作戦通り、山の南西部から山中に入る。すぐに鬼が付いてきた。
山の中腹まで来ただろうか、は鬼の気配に気づいた振りをし、ばっと振り返る。
刀を構え、出てくるのを待つ。女の鬼がゆらりゆらりと近づいて襲い掛かって来る。邪気は強いが十二鬼月というには弱い。
(また誤情報か・・・複数いるか。鬼はあまり群れないと聞いているが・・・。もう少し出方を見よう。)
は全力で戦っている振りをする。わざと飛ばされた拍子に太腿に傷を作ると、血の匂いが広がった。
「いい血の匂いだ。久々の稀血だな。ちょこまかしていないでそろそろ観念しろ。」
女の鬼は攻撃の手を早め、じわりじわりと追って来る。
(・・・そういう割には必死で追って来ない。この先に何かあるのか?)
(この先は約束の開けた場所だ。もう少し相手の手の内を出させたい。)
は何かありそうな事を知りながら、攻撃が押されている振りをする。