第12章 口吸い
は深呼吸しながら少しずつ速すぎる鼓動を鎮める。天井をぼんやり見ながらこの口吸いの先の行為について思いを巡らせた。
(私自身は少し怖いけど、受け入れても良いと思っている。でも今の杏寿郎の行動からして彼はそう思っていないだろうな。)
(とりあえず気まずくなるのは嫌だなあ)
(杏寿郎が自分を責めて気に病んでないといいな)
と、ぐるぐる考えた。
外からは、もうずっと水を浴びている音が聞こえる。
は目を閉じて水浴びが終わるのを待った。四半刻程経った頃だろうか、静かに襖が開いて杏寿郎が戻ってきた。
杏寿郎はごそごそと自分の布団に入り、の小指と自分の小指をそっと絡ませてきた。指は氷の様に冷たい。
いつもと様子が違うなと思っていたら、杏寿郎が小さく「」と呼ぶ。寝たふりをしようか返答しようか迷ったが、きちんと話すべきかと思い、は目を閉じたまま、「ん?戻ってきた?」と優しく尋ねた。
「その・・・怖がらせてしまってすまなかった・・・。押し倒してしまい、痛くはなかっただろうか?」
杏寿郎のいつもの張りのある声と違い、小さく涙声になっていくのに驚き、は杏寿郎の方へ顔を向けた。