第10章 初任務
静かに杏寿郎の方を向いて聞いていたが口を開いた。
「亡くなった人の心を受け取ろうとすることも、これまでの自分を考えることも、自分の行いを振り返ることも、次に進むために必要なことだと思う。」
「時々立ち止まってみないと、今進んでいる道が正しいか分からないもの。」
「いつもの杏寿郎のまっすぐな強さは、沢山の迷いや葛藤を乗り越えて、強く在りたいと願った上にあるものだと思うと尊敬する。」
「幻滅なんてするわけない。強くて優しい人と出会えて、同じ時間が過ごせて私は幸せだと思ってる。」
「・・・・。」
杏寿郎はじんわりと目頭が熱くなり、自分の心がふわふわと温かくなるのを感じながらの方を見る。
少し泣きそうな杏寿郎を見ては鼻の奥がツンとした。は少し首をかしげて優しく微笑みながら言う。
「煉獄杏寿郎。あなたを抱きしめてもいいですか?」
「・・・あぁ。」
は杏寿郎の体をぎゅっと抱きしめる。
杏寿郎はの体のぬくもりが伝わってくるとじわじわと心が満ち足りていくのが分かった。
「、ありがとう。」
杏寿郎もの体に腕を回し抱きしめた。
「私、杏寿郎の事がもっと知れて嬉しい。」
「・・・昔。亡くなった母に俺が幼い頃、強く優しい子になれと言われた。そうありたいと願いながら邁進してきたが、が俺をそう感じていてくれるのなら、今進んでいる道は正しいのだな。」
は杏寿郎の背中をポンポンと叩きながら言う。
「みんなの前で笑っていられるように、私の前では泣いてもいいんだよ。」
「それは少し不甲斐ないな。」
「あはは。杏寿郎らしい。でも泣くことは大切だよ。ほら、すっきりしたでしょ?」
は杏寿郎から体を離し、顔を覗き込んだ。
「そうだな。確かにすっきりした!!」
にこっと笑った顔がいつも杏寿郎だったので、もほっとして笑った。