第47章 あなたと一緒に
遠征の休憩時間にスマホを見た杏寿郎は送られてきた数枚の画面の中のが本当に柔らかい表情で美しいことにムッとした。天元と一緒にいる時もこんな無防備で安心した顔をするのかと。そしてその美しい顔を天元も見逃さずにカメラに収めていることも。前世で自分がいなくなった後の二人の様子を垣間見た気がして・・・。自分も納得しているし、もう過去はどうしようもないので、考えていても仕方ないと分かっていてもしばらく真顔になってしまっていた。
「俺の美しい奥方と息子が世話になってすまない。」
とメッセージを返した後、負け惜しみの様な文面だったとまた後悔した。「ありがとう。承知した。」が正解だったと。杏寿郎はこの思考は良くないと思い、目を閉じて一つ呼吸をしてから口角を上げて目を開ける。
隣に座っていたもう一人の顧問の先生がひょいと画面を覗き込んできた。今年赴任した若い女の先生だった。杏寿郎はこの女性はいつも少し距離が近いので苦手なのだ。
「煉獄先生。あれ、その人初等部に今年から来たかわいい先生ですよね。お知り合いですか?隣の宇髄先生の笑顔すごい・・あ~そうか。美男美女でお似合いの夫婦ですね」
「・・・宇髄の妻は別の人だ。彼女は俺の妻だ。君、あまり人の携帯を覗き見るもんじゃないぞ。」
「すみません。いつも笑顔の煉獄先生が珍しく無表情だったもので。つい画面が気になってしまって。でも、奥さんが他の男の人と一緒にいても許すなんて煉獄先生は心も広いですね。」
「・・・褒めてくれているのなら礼を言う。さあ、稽古が始まるぞ。」