第46章 年明け頃
その日の夕方、天元が仕事終わりにと桜寿郎の顔を見に来た。
病室のドアを控え目にノックし、「はーい」というの声を聞いてそっと入ってくる。
一時間ほど前に杏寿郎は家に帰っており、病室にはと桜寿郎しかいなかった。杏寿郎も天元が来ることはもちろん知っている。
「、おめでと。頑張ったな。」
体は大丈夫か?と、の頭を撫でながら言う。
「ありがとう。天元。二番目に抱っこするんじゃなかったの?」
「それはさすがに・・な。」と、言いながら、桜寿郎の眠るベッドのそばに行き、覗き込む。小さな声で「おぉ 小せぇなぁ。」と言いながら、そっと頬を指先で触れる。
「いいよ。抱っこしてあげて。・・・天元。また泣いてる。」
「いや。これは泣くだろ。桜寿郎だぜ。・・、お前も泣いてんじゃんか。」
「昼間も杏寿郎とさんざん泣いたんだけどね。なんか色々思い出すよね。」
「俺、今日仕事で良かったわ。その場に居合わせたらみんなが引くくらい泣いてた。」
「大丈夫。来た人みんな、看護師さんが引くくらい泣いてた。」
「ふふっ、そうかよ。」
遠慮してなかなか手を出さない天元を病室のソファに座らせ、タオルにくるまれた桜寿郎をそっと手渡す。
「おぉ、軽りぃな。こんなに小さかったっけ?」
「甘い、赤ん坊の匂いがするなぁ。」
天元は桜寿郎の顔に自分の顔を近づけて、優しい顔で覗き込む。
しばらくの間ふわふわの髪の毛や小さな鼻にそっと触れていたが、ベッドに腰かけて微笑みながら自分を眺めているを見る。
「、・・何で俺の顔見てんだよ?」
「天元、いい顔するなと思って。その顔、私があなたの好きな所の1つだったなぁって。子どもほんとに好きなんだね。」
「・・・まぁ、以外と嫌いじゃなかったな。」
は天元の隣に座って一緒に桜寿郎の寝顔を見る。
「天元の所も、男の子が生まれるんでしょ?」
「・・・あぁ。」
一瞬天元の表情が曇った。それをは見逃さず、問う。
「天元。男の子が生まれるの怖い?」
天元の動きが止まり、眼だけ動かしてを見て、「・・・何で?」と、聞き返す。
怖い顔になってるよ。と、天元の顔を覗き込みながらは続ける。