第46章 年明け頃
病室に移動すると杏寿郎はずっと桜寿郎を抱っこしている。小さな顔を眺めては微笑んで小さな声で「桜寿郎」と呼び、そっと髪や頬に触れていた。小さな掌に自分の指を掴ませたり、小さな爪が生えていることに感動して、小さな掌にキスをしたり・・・。
桜寿郎の方も抱かれている安心感か、起きている時でもほとんど泣かず、杏寿郎の腕の中でじーっと杏寿郎を見つめて大人しくしていた。
杏寿郎は時折、の方を向いて、
「体は大丈夫か?」とか
「かわいいなぁ」とか
「ふにゃふにゃだな。」とか
「暖かいなぁ」とか
「あくびをしたぞ。」とか
「壊れそうだな。」とか
「甘い匂いだ。」とか
「泣いてしまった。」とか
「俺はきっと、今日のことは一生忘れないだろうな」とか
「幸せすぎてどうしたらいい?」と聞いてきた。
そのたびには杏寿郎が可愛くて、前世でもこれが見たかったなあと思って涙がでてきた。
そしてそれを見て杏寿郎も「泣くな、。」と自分の涙との涙を拭きながら笑う。
桜寿郎の顔がよく見えるように抱っこし、桜寿郎を見ながら嬉しそうに目を細めて微笑む杏寿郎の姿を何枚も写真に撮った。
桜寿郎の誕生を聞きつけて、色々な人が見に来てくれたが、皆、杏寿郎が桜寿郎を抱っこしている姿を見て泣いていた。