第36章 世界史
2人は理事長室を出て、高等部の職員室へ向かう。
「分からないことばかりなので、色々教えてください。」
「ああ。なんでも聞いてくれ。」
「ありがとうございます!煉獄先生。」
にこっと笑った顔が懐かしすぎて、杏寿郎の燃えるような紅い目から一粒涙が零れた。
「煉獄先生?」
「すまない。知り合いによく似ていて、思い出してしまった。」
急いで涙を拭う。
「そうなんですね。」
心配そうな表情を見て、杏寿郎は話題を変えた。
「初対面なのに不躾で申し訳ないが、先生は今おいくつだ?」
「はい。12月で24になります。差し支えなければ煉獄先生のお歳も伺ってもいいですか?」
「俺も5月で24になった。同学年だな。ならば、生徒の前以外は敬語はやめてもらえるか?」
「・・うん。・慣れるまでに時間がかかるかもしれないけど・・・。」
眉尻をさげ、少し困ったように言うを見て、また目頭が熱くなってきたので、視線を逸らす。
「ははは。いい感じだ!」
(フランスか・・道理で日本を探してもいないわけだ。)
そこへ、炭治郎達が通りがかった。
「あ、煉獄先・・生。え?・・・さん!?」
「初めまして。明日から世界史を担当するです。私の名前よく知ってましたね。」
炭治郎はあれ?っという顔で杏寿郎を見ると、杏寿郎は少しだけ首を横に振り合図を送る。
「すみません。馴れ馴れしくて。竈門炭治郎です。よろしくお願いします。」
「気にしないで竈門君。何て呼んでくれてもいいよ。」
「はい、ありがとうございます。」
職員室に着き、ドアを開けるとみんなこちらを向いて一斉に驚いた雰囲気になる。が挨拶している間、皆の視線は杏寿郎に注がれる。
ここでも杏寿郎は少し困った顔で首を横に振り、皆それを見て察する。
机やロッカーなどの場所を教えていると、美術室から宇髄が戻って来た。
宇髄は少しだけ雰囲気が違う職員室にあれ?という顔をした。不死川が目であっちを見ろと合図を送る。
合図を送られた先にいたのは、とてもよく知っている大切だった人。自分の腕の中で微笑みながら死んでしまった愛する人。
「!」
宇髄が驚いた顔での前へ駆け寄る。
急に名前を呼ばれて、は振り向く。