第36章 世界史
「・・・・先生、美術の宇髄先生だ。」
杏寿郎は宇髄の目をじっと見ながら、微かに首を横に振る。
「初めまして。明日から世界史を担当するです。よろしくお願いします。」
丁寧にお辞儀をし、にっこりと笑う。
「美術の宇髄・・天元です。」
言い終わるかどうかで宇髄の目から涙が出た。
「宇髄先生?」
「・・あー悪りぃ。・・知り合いに似てたんで。すいません。」
軽く頭を下げて、宇髄は美術室に戻った。
は杏寿郎を見る。
「俺の知り合いと同じ人の事だ。」
「そうですか。」
は、あまり深く聞くのは良くないだろうと思い、それ以上は聞かなかった。
一通り説明を聞き終えては帰った。
職員室は静かになり、皆何と声をかけていいのか分からないという雰囲気になったので、杏寿郎も社会科準備室に行った。
杏寿郎も天元もそれぞれの準備室にこもって前世を思い出し、しばらく泣いた。
もともと泣くような性格の男達ではないので、泣き腫らした目を見た同僚や家族をいたく心配させた。
次の日の朝。は早めに出勤し、机や教材の準備を行っていた。杏寿郎が出勤するとにっこり笑って挨拶をして、作業に戻る。
杏寿郎はふと、作業をしているの右手の薬指にルビーの指輪が輝いているのを見つけた。杏寿郎が前世で贈ったものとよく似ている。挨拶も忘れて驚いて尋ねる。
「先生。・・・君、その指輪は?」
「あ、これは、一目惚れして買ったルビーです。どうしても身につけておかないといけない気がして・・これだけ赤みが強いのは珍しいんだって。いや・・・違うね。勤務中は外さないといけないってことだよね?煉獄先生ありがとう。」
外した指輪は、細い金色のネックレスチェーンに通して首につけ、洋服の中に隠す。
「い・・いや。俺も宝石では唯一ルビーだけは知っているんだ・・。」
「煉獄先生の目もルビーみたいな色だもんね。」
(そうだ。だから赤いルビーを探して贈ったんだ。いつでも君の傍で見守っていられるようにと願いを込めて・・)