第31章 夢
少しの沈黙の後、天元は改まった顔をしての前に座りなおした。
「、残りのの人生を俺にくれ。捨ててもいいって思う人生なら俺が欲しい。」
「煉獄が好きなのは十分承知している。煉獄の替わりにしてくれて構わない。煉獄に負けないくらい大事にする。」
「もちろん桜寿郎も大切にする。」
は少し驚いた顔で聞き返す。
「・・天元。私が好きって本気だったの?」
「そうだ。」
「もしかして、もうずっと?」
「ずっとだ。もう6年目か?」
「・・どうしたの?色男が。」
「俺が聞きてぇよ。・・いや本当は理由は分かっている。ずっと煉獄とが羨ましかったんだ。お互いを大切にして、お互いを信じて疑わない。俺が生きてきた道と正反対に生きててよ。」
穏やかに微笑みながら天元は続ける。
「お前は煉獄の事が大好きで、俺のこといつも軽くあしらうくせに、本当につらい時や苦しい時は察して少しだけ甘やかしてくれる。」
「たまに何の警戒心も無く素直に俺の言うこと聞いて。可愛い顔で笑ったかと思うと、ポロポロ泣き出したり、意外と気が強くて、戦うときは別人みたいな顔して。」
「・・気が付いたらずっと見てた。…こんな理由じゃダメか?」
「煉獄と幸せになるのを見届けようと思ってたけどよ。状況が変わっちまった。少しずつでいいから、お前の心にもっと俺を入れてくれ。」
もきちんと座って、答える。
「・・天元。ずっとあなたの気持ちに向き合わずにいてごめんなさい。」
「・・正直に言うと、私もあなたとじゃれ合うのが楽しかった。だからわざと向き合わなかったんだと思う。」
「あなたの気持ちはよく分かりました。」
「私はあなたを杏寿郎の替わりにはしない。あなたをもっと好きになりたいから、あなたの事をたくさん教えて。」
(杏寿郎。こうしろってことでしょ?)
「俺は色男だからな。俺のこと知ったらもう引き返せねぇぜ。」
天元がいつもの顔でにっと笑う。
「・・それは楽しみ。鬼殺隊も引退したから、死んでしまう心配もないしね。」
「そうだな。これからは俺がの帰りを心配して待つ番だ。」
の頭をふわふわと撫で、「やっとだな。」とつぶやくと、の唇に触れるだけの口づけをする。
しばらく2人は見つめ合い、お互いふっと笑った。