第26章 安心
桜寿郎のほうもウトウトし始めたときに、ドアをノックする音がした。・・・炭治郎だ。
「失礼します。」
天元は慌てて、唇の前で人差し指を立て、「しーっ」と合図をした。
「す、すみません。出直します。」
炭治郎が急いで出ようとしたが、
「いや、待て。桜寿郎抱っこしてくれ。動けねぇとこだった。」
と呼び止められる。炭治郎がそっと抱き上げ、背中をとんとんしながら寝かしつける。
「お前、うまいな。助かった。」
「・・・あの。さんのご家族の方ですか?僕、竈門炭治郎と言います。」
(こいつ、俺が分かってねぇ。無理もないか、柱合会議の時は俺の顔ほとんど見てねえし、今日は隊服も化粧も額当てもねぇ)
「・・まぁ。そんなもんだ。に呼ばれて来たのかよ?」
「はい。寝かしつけ係です。」
「そうか。たまに来てやってくれ。こいつ自分ではつらいって言わねぇから。」
天元はずっとの頭をふわふわと撫でている。
「あ、さんから少し安心の匂いがしてる。良かった。」
「どういうことだ?」
「僕は匂いで人の感情が少しわかるんです。さんから時々ほんの少しだけ深い絶望の匂いがしていたので心配していました。」
「へぇ。で、今は安心ねぇ。じゃ、俺からは?」
「ええと、愛情ですか?お好きなんですねさんの事。・・・ん?」
さんは煉獄さんの奥さんのはず・・・よく考えると、この人とさんの距離感はおかしい。まずいところに出くわしたかも・・・と思いながら炭治郎は汗をダラダラとかき始めた。
「…何を考えてるか分かるぜ。大丈夫だ。やましいことはねぇ。俺が勝手に好いてるだけだ。」
「お前の鼻なかなかだな。多分合ってるぜ。の深い絶望ってのは?」
「少し前に煉獄さんのお屋敷であった時にも、昨日も・・全体的には感情の匂い自体が無いんですが、ふとした時に少しだけ滲み出てくる生きることへの絶望の匂い。」
「でも、今日は安心の匂いがしたのでほっとしました。って俺、余計なお世話ですけど。」
「ふーん。そう聞くと安心ってのは嬉しいな。」