第22章 ※近い未来
涙がぽろぽろと流れてくる。
お腹の子に薄情な母の思いが伝わってしまったのか、いつもよりも激しく蹴ってくる。余りに激しく蹴るので、お腹に手を置いている杏寿郎も目を覚ましてしまった。
「どうした、どうした。そんなに蹴って。母上のあばら骨が折れてしまうぞ。」
杏寿郎は、掌で蹴っている所を押さえながら言う。
泣き顔は見せたくないので、は涙を拭き、深呼吸する。
外はまだ暗い。
「ふふふ。あなたの子だから力が強い。やっぱり男の子かな?」
泣いていたのを悟られないように明るく返す。
「も女子にしては力強いからな。なんせ炎柱の俺がなかなか勝負で勝てん。」
「私も最初はか弱かったです。」
「俺と出会った時にはもう強かったぞ?」
「でも、お腹の子は俺も男の子だと思う。の顔が少しキリッとして美しくなっているからな。」
「どういうこと?」
「母の顔が可愛らしくなると女の子で、美しくなると男の子だそうだ。」
「ん?は最近また少し痩せたか?まだ気分が悪いのか?」
背中や腰を触りながら杏寿郎は言う。
「そうですか?食べる量は変わっていないと思うのですが・・・。」
「食べる量は増やさねばならん。お腹の子が全て栄養を取ってしまっているぞ。」
「確かにそうかも。。。善処します。」
「母乳は血液から作られるらしいからな。今の内から滋養のあるものを沢山食べておくんだ。俺の子はきっと良く乳を飲むぞ。」
「・・・杏寿郎。さっきからの話はどこからですか?」
杏寿郎が、らしくない事ばかりを言うので、思わず尋ねる。
「・・千からだ。の体に良い食事のことなどを調べてくれている。の体は絶対に冷やしてはだめだと口を酸っぱくして毎度言われる。」
「ふふふ。千寿郎・・姉上泣きそう。」
可愛い千寿郎の顔が浮かぶ。