第22章 ※近い未来
「杏寿郎!!」
は、がばっと起きる。頬には涙の跡が何筋もついている。
「ほら、、おいで。どうした涙まで流して。大丈夫だ、ここにいる。」
いつものように後ろから抱きしめてもらい。手を握ってくれた。ぽかぽかとして気持ちが良かったが、眠れなかった。
何度も何度も見るようになった夢。
少しずつ長くなっている、余りにも鮮明な夢。
ひんやりと肌寒い空気。焦げたような匂いまで思い出せる。
これは・・・おそらく只の夢ではない。
――― 杏寿郎は死んでしまう。
――― ・・・きっと、そう遠くない。鬼との戦いで致命傷を負う。
―――行かないでとは言えない。言ったとしても困らせるだけ。
――― 一緒に戦いたい。一緒ならきっと死なせずに済む。
でも、お腹がもうこんなに大きくなってしまった。行っても邪魔なだけ。そもそも連れて行ってはくれない。
――― お腹に子どもがいなかったら?
・・・待て、私。今何を考えた?この子は杏寿郎が大切にしている子。私が欲しいと思った杏寿郎の生きた証。守らなければならない子。
――― ・・・指令が来たら杏寿郎は行くしかない。もし死ぬと分かっていても、行くだろう。それが自分の仕事ならば。と。
では、私にできることは?
笑顔で『行ってらっしゃい』って送り出すだけ。
ならば、せめて・・・お腹の子の顔を見てからに。