第22章 ※近い未来
師走に入る頃、は悪い夢を見るようになった。
杏寿郎が血だらけになっている夢。目や口、腹から血を流し、何かを言おうとする。苦しそうな顔ではなく、少し微笑む様なその口が何かを言おうとする所で、いつもはっと目が覚める。
「・・っ!」
体がビクッと跳ね、慌てて一緒に寝ている杏寿郎を確認する。
「また悪い夢を見たか?ほらここにいる。大丈夫だ。」
杏寿郎は腕を伸ばしてを抱き寄せる。
この頃には膨らんだお腹が邪魔をするので、向かい合うのではなく、背中から杏寿郎に抱きしめてもらいながら眠っていた。
杏寿郎は必ず手をのお腹に置き、その上にも手を重ねる。杏寿郎は体温が高く暖かい。その暖かさに包まれてまた眠りに落ちる。ここ何日もその繰り返しだった。
この日の夢は、いつもよりも少し長かった。
汽車が脱線している。
市松柄の羽織の若い隊士が泣いている。
見たことのない鬼、目には上弦の印。
いつもの夢の様に杏寿郎は沢山の血を流して座っている。座っている場所の地面は真っ赤に染まっていた。
杏寿郎は隊士に何かを言い、優しい顔で笑う。
何を言っているかは分からない。
そして静かに微笑みながら目を閉じ、体から力が抜ける。