第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
「あなたは……何のために、鬼殺隊を、しているのですか……っ」
絞り出す声で何とかそう聞いた。視線をこちらにくれる魘夢は、静かにに近付いてくる。
「俺たち鬼殺隊の目的は、“鬼を切ること”」
「……そう、ですけど…っ…」
「目的は同じさ ちゃんも俺も。入隊の時にそう言い聞かされているはずだ」
「…………」
そんな事は千も万も承知だ。だから鬼殺隊員は歯を食いしばり血を吐く思いで夜な夜な鬼と戦っている。
肌で感じる程鬼に殺意をもった隊士もいれば、感情は然程読めぬ凛とした隊士もいるのは事実だ。それは個人の差であるし、気にした事も無かったが。
眠柱はの目の前まで、躊躇なく距離を寄せてくる。
まるで呪術にかかるよう、促されるまま視界を上げれば少女さながらの愛らしい顔がある。裏腹に、瞳の奥からちりちり漏れるのは 常軌を逸脱した色だった。
「でも、鬼を斬るのは…………愉しいでしょう」
「っ」
「斬る瞬間、斬られた後の悲痛の表情…………堪らないよねえ」
「……っ!」
指の腹がそっと、の輪郭を捉えられた。こちらが真上を向く程に 真っ直ぐ顔を見下ろされていた。
所作はゆったりと、まるで恋人に触れる程の丁寧さと距離間で。頰にかかる眠柱の髪からは俗世の物でない死んだ花のような香りがする。
何故なのか身体が動かなくなった。
眉間が狭く詰まる。は震えそうになる唇を硬く閉じ、負けじと睨み返すことしか出来なかった。
「…………うふ、ははっ うふふふ」
「な、何が、おかしいんです……っ」
「癖になりそうだなァって」
「え」
「後輩の餓鬼 イジメるの」
「……っ」
「でも、お館様が怒るから……」
「………」
「今日はお終い。……今日はね」
眠柱はにっこり笑うとあっさりから離れ、明るくなる東の空を背に歩き出してしまう。
任務は終了だ。は大きく呼吸した。一定以上の距離を取り、眠柱の後について森を抜け出した。