第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
空が明るくなる頃、ようやく町に近付いた。そろそろ眠柱との任務も完全に終了の時間だ。
鬼を無事に倒した上にこちらには怪我もないのだから、今宵の仕事は無事な成功と言える。数々の不審な点はあったものの、功績の全ては明らかに眠柱のおかげだった。
は一旦足を止める、立場としても上官である眠柱に礼は述べておくべきと感じ黒服の背に声をかけた。
「あの……」
「なぁに?」
「あ、ありがとうございました……あと、ごめんなさい。」
魘夢は振り返る。急にそう言われることは解せないのか、ほんのり首を傾げていた。
「最初の鬼も二体目も、全てお考えがあっての行動だったんですよね。……なのに私の不注意で、出しゃばるような事をしてしまい、お邪魔をしてしまって……」
「ああ、ソレね」
そぶりは相変わらず軽やかだ。口元に手を添えた愛らしい仕草と共に、気にすらしていない様子で返答をくれた。
「俺の方こそちゃんには感謝してるよ」
「え」
「結果としてはちゃんが臨場感溢れる素人な動きをしてくれたおかげで、鬼にも怪しまれずに済んだ」
「……」
「取り引きの材料にもなってくれたし、なんていうか思考も行動も単純で浅はかで」
「……」
「久々に初心を思い出したなぁ」
「……」
「まあ、俺はそこまでのグズではなかったけれど」
やはり、この人には要所に悪意がある。言いようは酷いものだった。品ある造作からは想像出来ない言い草が、よくもまあぽんぽん出て来るものだ。
「そこの角に旨い定食屋があるんだ」
「……あっ、そうですか」
「どうかな、一緒に朝餉でも。御馳走するよ」
「遠慮します食欲ないので」
まさかの急な誘いだったが、即答で返してやった。思い切り引きつるこちらの顔をどこか嬉しそうに見ているから達が悪い。
眠柱は最後の最後まで非現実的なふわふわする雰囲気を崩す事がなかった。油断をすると甘くも良からぬ夢の中へ引きずり込まれるような、変な感覚を植え付けられそうになる。
魘夢は左手をひらひら振り、ここ1番の優しい表情で言う。
「じゃあね。ゆっくりお眠り」
「あ、はい」
「幸せな夢を」
「え?ええ」
「ふふ、蝶屋敷で」
「…………」
しかし逐一なんだか、なんだか言い方が勘に触るのだ。