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〈短編〉鬼滅の刃 御伽噺

第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常


「一緒に任務へ向かう相手の情報、俺は全て記憶してきてる」

「……え、……っ」

「油断、奢り、過信、弱者こそ“そういう所”から足元を救われるものさ。出身、家族構成、身体数値、呼吸の習得時期、入隊動機……ぜ〜んぶ教えてやろうか?」


くすくす軽やかな笑みの元、こちらの手の内全てを知っていると言い切る台詞は 余りにも気味が悪くおぞましさを感じた。鳥肌が立ちそうな感覚は怒りなのか拒絶なのな恐怖なのか、自分でもわからなかった。

「へっいらねぇぜ、そんな情報は。歳だけわかりゃ十分だ 食い時だなあぁ」

「っ」

「じゃあな。かわいこチャン」

「!!!」

鬼はぐわりと口を開く。
咄嗟に思い切り、目を瞑った。





その後の記憶が曖昧だった。
強烈な眠気は甘いような涼やかなような、不思議な香りが誘うものなのか。頰に触れるのは土の匂い、はくらりと揺れる頭を何とか起こし惚けた目元で当たりを見渡した。

「あ、おはよう」

「……眠、柱……さ…ま……」

「一緒に寝ちゃうなんて、素直だねぇ ちゃんは」

目の前には、あの眠柱がいる。霞がかる脳のせいか、視線を戻す際に見える横顔が、細やかでえらく端整に映った。

眠柱の熱視線の先を追ってみる。
足元には鬼の首がある。

それを見て、は先程までの出来事を全て思い出した。


「さっきの、……鬼……?!」

は地面にうつ伏せている身を咄嗟に起こした。身体に怪我はないし鬼に噛まれた跡もなかった。鬼は首だけになっているし眠柱が斬ったと考えるのが自然だった。

自然だったのだが。



「な、何を………しているの、ですか…………」

鬼はもう首だけだ。身体は既に殆ど崩壊しており、何故か頭部だけ崩壊がえらくゆっくりだった。鬼の目元は大きく見開かれ血管が浮き出るほど赤く染まった眼球から涙が溢れている。

悔いるような、惜しむような。
重く悲しい感情がこちらにまで流れてくるような。

眠柱は鬼の首を食い入るように見下ろし、上から刃でそれを撫で付けている。陶酔する狂気な雰囲気の中で、刀を時折りぐるりと捻っていた。

どう見ても勝負は付いている。鬼はもう間も無く死ぬ。それでもこの場を離れようとしない眠柱の目的が“鬼狩り”以外である事は明白だった。


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