第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
しばしの間の後に、眠柱は鬼に答えを返していた。
「うん。しようか、取引き」
「眠柱、様っ……」
思い切り困惑の顔では魘夢を見上げた。柱が直々に鬼に仲間を売るだなんて話は聞いた事がない。込み上げるのは怒り、憎悪、ひどい嫌悪感ばかりだった。
「うわあ イイ表情だね」
「なにを、言って……ッあなたは!あなたは鬼殺隊ではないんですか?!何故鬼の言いなりになっているんですか?!」
「だって、彼の言う事は最もじゃない。」
両手を広げ諭すよう、眠柱の口調はどこまでも落ち着いたままだ。
「さっきの血鬼術、仕留めるのは厄介だし仮に柱である俺が怪我でも負えば全体の士気にも戦力に大きく響く……優先すべきはどちらの命か、簡単でしょう?」
「だから、…って…」
その言い分は最もでもある。鬼殺隊である以上、状況に応じた判断は必要であるしそこには自らの命を投げ出す事態も当然含まれてはいる。けれど、今この場でそれを迫られるべき必要があるのか、わからなくなってしまう。視線が地面へと泳いでゆく。
「あれぇもしかして、俺が助けてくれるとでも思ってた?」
「別に、そんな事……は……」
眠柱は一歩でとの距離を詰める。反射的に身が引けそうになるが、魘夢はその細腕からは想像出来ぬ力で、逃さぬようあっという間にの腕を取る。身動いだ所で痛みがついて来るばかりだった。
「っ…離して…!」
「これは“柱”からの命令、従わないなら隊律違反」
「っ……」
真横に顔を寄せられた。耳元で静かに囁かれるのは、殉死を慈しむ声だった。
「鬼殺隊の一員として、尊い死を。」
「っ……!」
「短い任務 ご苦労さま」
鬼の方へ、身を突き飛ばされた。
受け身を取る事も叶わぬうちに鬼に首元を掴まれた。涎をだらだら垂らしながら、鬼は大きな口を開けてに頭を近づけてくる。かかる生息からはひどい悪臭がした。
「美味そうだなぁぁ、女、オメェいくつだ」
「……っ答える訳、ないでしょ……」
「彼女は今、蝶よ花よの15歳」
「っ?!……な、」
何故知っているのか、そもそもわざわざ教える必要もなかろうに。もはや眠柱には不審感しかなく思い切り睨み付けた。その表情を愉しむようにゆっくりと、魘夢は人差し指で自身のこめかみを指した。