第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
急に鼓膜をえぐるような高い音がした。目の前にはどこから現れたのか、大型の鬼がおり長い牙で眠柱の刃にがっちり歯を立てている。
右手を素早く懐に突っ込む魘夢の手元から、錐のような先鋭状の武器が一瞬だけ見えた。しかしそんな小さな 日輪刀ですらないものでは鬼には気休めにしかならないだろう。
は横から、自身の刀で助太刀を入れる。鬼はあっさりそれをかわし巨躯を浮かせて受け身を取っていた。
「あの鬼、どこから?!姿が見えなかった、血鬼術なの?!」
「そのようだね。にしてもすごい力……腕が痺れちゃったんだけど」
悠長な口調でそう言う眠柱は、刀を右手に持ち替え利き手をぷらぷら宙に浮かせていた。鬼はじろりとこちらに目を向けてくる。正確には一直線に、魘夢の事だけを見ていた。
「よく止めたなァ。お前、柱かぁ…?」
「そうだよ。いかにもね」
「ハハハハァそりゃあいいぜ、聞けや柱の兄ちゃん」
「なにかな?」
「取引きしようや。オレと」
鬼無勢が鬼殺隊と取引きだなんて、聞いた事もない。
「何を……馬鹿なことを言っているの?!?!」
目を見開き声を大にするの隣で魘夢は素直に刀をしまう。にこやかに鬼と会話を始めてしまった。
「いいよ。じゃあまずは君の言い分を聞こうか」
「眠柱様?!?!な、何を」
「さすがは柱だ、話せるねぇ…」
鬼は豪快に舌舐めずりをする、飛び出た目玉は酷く充血していた。鬼は真っ直ぐを指差しながら言う。
「兄ちゃんの命は助けてやる。代わりにそっちの女をくれや」
「なっ……?!」
「“俺を見逃す代わりに、ちゃんを餌によこせ”……と」
「そんな、そんな馬鹿げた話が通るわけないじゃない!!ふざけないで!!」
馬鹿な話に付き合う義理もなかろうに。1人声を荒げるに向かい、魘夢はやや声を低くする。
「少し黙っててくれるかな」
「……っ」
「これは俺と彼との“取引き”なんだから」
「……眠、柱、さま……っ」
美貌を惜しみ無く歪ませる。顔付きは柔和であるのに その瞳はぞくりとする程 冷徹そのものだった。
ぶわりと冷えた汗が出た。まさかとは思うが、そう信じたいが、この人は平気で仲間を鬼に売るのではないか。そんな予感がした。