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〈短編〉鬼滅の刃 御伽噺

第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常


気配は一瞬だった。急に、頭に手が触れた。


「っ?!」

「憎いよね。鬼」

思わず顔を上げた。ぽんと刹那だけ子供をあやすようにを撫でる眠柱は、感じ良く綺麗に微笑んでいる。
こちらが戸惑う間に伸びた背をくるりと返し 鬼の側まで歩みを進めてゆく。そして膝を落とし、落ちる髪を耳にかけながら鬼の顔を覗き込む。

「憎い鬼には最大の罰を。そう思うでしょう?」

「え……?」

「鬼は元人間……色んな“記憶”を抱えている。それを全て本人が望んだ幸せな形で夢に見るんだ」

「ゆめ……?」

「そして明け方に目覚めて思う。“あれもこれも全てが自分にとって都合の良いただの夢だっただけなんだ”って、“これから陽光に炙り殺されるんだ”って……」

「……」

「その時って、どんな気分かなぁ」

「……」


嫌な雰囲気だ。この人は一体何なのか、言っている事は間違ってはいないのに。彼の言う通り憎い鬼には罰を与えるのは当然の報いである。しかし魘夢の左手は躊躇なく、むしろ大切な物に触るよう鬼の顔に触れているし、愛を囁くような声色と静か過ぎる空気感はなんだか気味が悪かった。


眠柱はその場を名残惜しむようゆっくり立ち上がり、肩越しに声をかけてきた。

「先を急ごうか」

「……はい……」





あれからしばし森の中を徘徊した。人の事は言えないが眠柱も雑談が得意な方ではないようで、会話らしい会話も殆どなきまま時だけが過ぎてゆく。

ふと、魘夢が足を止める。音もなく刀の柄に手を添える仕草を受けても状況を理解した。

「鬼……?!」

「みたいだね。気配がよくわからないけれど」

「どこに?!私には、全然……」

「離れないでね」

「えっ……?!」

「間合いの外に出たら、守ってやってあげないよ」

眠柱は目元を一気に細くする。今までの舐めた口調ではなく、やや早口でそう言った。どこにどう鬼が潜んでいるのかも読めていないは、動きを止めたまま注意を左右に向ける事しか出来なかった。

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