第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
「っ……!!」
急に、目の前が真っ暗に落ちた。
気付いた頃には口の中にじゃりじゃりした土の味がある。何が起きたのか全くわからなかったが、傷を負った痛みはない。唯一わかったのは、右手と頭部に圧を得た事くらいだ。少し離れた場所から、自分のものではない 刀を鞘に納める音がした。
は咄嗟に顔を上げた。どうやら、思い切り地面に突っ伏す格好になるまで上から押さえつけられ 土に顔半分が埋まったらしかった。あの一瞬でとんでもない速さと力で。細腕に見えるがさすがは実力者だ、には些細な動きすら一切見えていなかった。
「ごほ、げほっ…ひっ 口に虫が……ッ」
「大丈夫?いきなり斬ろうとするから、つい」
「お、鬼は?!」
「片付けたよ、仕方なくね。」
への嫌味を込めているのか、最後の一言だけはやや声色が高かった。地面に腹をつけた体勢のまま見上げると 眠柱は腰を屈め片手を差し出してくれていた。
その手を取るのも気が引けて、は素早く一人で立ち上がった。そして辺りを一瞥する。先程の鬼は岩を背にし、肩を上下させながら大人しくなっていた。
「あの一瞬の間で、……すごい……」
「えー嘘でしょう。少しも一瞬なんかじゃなかったけど」
「……」
「止まって見えるくらいだったなぁ 俺にはね」
またも、最後の一言はなんだか強調気味だ。
小さな咳払いとともに 視線だけで眠柱の顔を伺ってみた。髪の一本すら、最初となんら変わらぬ好青年な装いのままではあるが、口元だけはひどく歪んでいる。
実物を見て確かめろと、胡蝶の言う意味がわかった。もはや間違いない。この眠柱は性格が破綻しているのだ。
無益なやり取りはなるべく避け任務をさっさと遂行すべき、そう本能が感知しは鬼にとどめをさそうと近づいた。
「……あれ?!私の刀は?」
「ここだよ。」
その声を受け振り返った。おそらくは落地体勢の際に、いつの間にか刀までも奪われていたようだ。 はそれすら気付けぬ程、力の差は歴然だった。
魘夢は右手に持ったの刀をくるりと回し、柄をこちらへ渡してくれた。