第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
向かう先は近かった。眠柱は敵の位置をきちんと読んでいたようだ。大きな岩が露出する岩肌のそばに一体の鬼がいた。
幸いにも鬼はまだこちらに気付いていない様子だ。この距離なら上手くいけば、一撃で首を斬れるかもしれない。
「鬼……、眠柱様ここは私が。あの鬼はそこまで素早さもなさそうですし」
は鞘を深く握り、柄へ右手をそえ姿勢を低くした。初速を出そうとする瞬間、視界の上からぐらりと眠柱の顔が入ってくる。
「?!」
「放っておこう」
「……え、……?」
「別に今じゃなくとも、雑魚はすぐに片付くよ」
意味がわからなかった。眠柱はに向けて微笑するばかりだ。はもう一度柄を握り直し、眉間を寄せた。
「放ってって、……取り逃した後で鬼が人間を襲ったらどうするんですか?!」
「こんな時間にこの山にいるのは俺達だけだよ。つまり、こちらがその気になればいくらでも呼び寄せる事が出来る」
「…………」
「“今夜中”に片付ければいいんだから、時間はたくさんある」
「…………」
「そうでしょう?」
優しくそう諭されると、不覚にも思考を持っていかれそうになってしまった。はブンブン首を振る。やはり鬼は見つけ次第処分すべきだ。再び顔をすごめて見せ、眠柱へ食い下がる。
「鬼は見つけ次第すぐに片付けるべきです!!」
「何故?あの鬼はいずれ死ぬんだから」
「どうしてそう言い切れるんですか……?!」
「その為に、俺がここに来てやっているんだから」
言い方は何やら恩着せがましいが。忘れていたが、相手は確たる実力を認められた柱だ。しらりと言い切る様は大層だが、眠柱の実力を疑うというよりは鬼相手に悠長に構えている風が理解出来なかった。
「鬼狩りかぁぁ……!!」
「?!き、気付かれた?!」
どうやらお喋りが過ぎたようで、先程の鬼に存在を知られてしまった。こうなった以上はもう殺すしかないだろう。は再度、自身の刀を握りそれをすらりと抜いた。
「あ〜あ、もう…… ちゃんが煩くするから」
眠柱は余裕綽々な声色を崩さない。鬼は理性なく罵声を飛ばしながら一直線にこちらへ向かってくる。間合いに入られる瞬間、刀を振り上げよう腕に意識を集中した。