第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
優しそうな人で一安心、は胸を撫で下ろした。
「君は誰か、柱の継子?」
なんともお上品に首を傾げながら、そう問われたのでありのままを返答した。
「いえ。現在は蝶屋敷でお世話になっていますが、胡蝶様には別の継子がおりまして、私自身は柱の継子ではなく、」
「あーぁ 蝶屋敷か……」
顎に片手を添え1人納得をする魘夢はいきなり、思い切り目元を歪めて見せる。
「通りで、嫌〜な臭いがすると思った」
「……………………は?」
一瞬固まってしまったではないか。
確かに任務中は汗だくになるし鬼の返り血はもらうし泥だらけになるし、お世辞にも清潔な状態とはいかないだろう。しかし任務があければ身だしなみくらいはきちんとしているつもりだった。ぽっかり口を開けたままのを小馬鹿にする口調で、魘夢は愉快そうに話しだした。
「あぁ、ごめんねぇ。嫌なってのは、なんかこう……あの屋敷の花の蜜と混ざったみたいな薬っぽい感じがどうにも苦手で」
「…………」
「君が臭いとか、そういうんじゃないから安心してね」
「…………はぁ」
鬼殺隊において、胡蝶に憧れる剣士は多い。絶対的“砦”であろう蝶屋敷が苦手な隊士がいようとは初耳だった。悪気はないのかどうなのか、眠柱はまた元のお綺麗な顔付きで微笑んでいる。
「じゃあ、行こうか。」
音もなく歩み出す背中について、も遅れをとらぬよう進んでいった。
◆
月夜であるからそこそこ明るい。走りも焦りもせず、眠柱は夜の散歩を楽しむよう自分のペースでゆったり歩いてゆく。少し後ろから追い掛けていると、ふと近づいて来るのは鬼の気配だった。
「この感じ……近くに、鬼が……?!」
「そのようだね」
は思わず刀の柄に手を伸ばした。一方の眠柱は少しも構える様子がない。ほんのり道を逸れると茂みの中へ向かって行ってしまう。
「眠柱様?!どちらへ」
返答はない。仕方なしに消えゆく黒い背中を追うしかなかった。