第4章 合同任務/魘夢(眠柱if)/鬼殺隊夢主/日常
鴉からの伝令を受けたのはちょうど夕暮れの頃。
ここから数里も離れていない集落の近くで、人々が行方不明になる事件が起きているらしい。どうもそれは鬼のせいであるとか。
階級でいけばはまだ中の方ではあるが、剣技はそれなり、勝負強さもとい 度胸はまあまあある方だ。
よって任務自体に負の感情がついて回る事は然程ない。今回唯一気になったのは共に任務にあたるという「眠柱」の件だった。
世話になっている蝶屋敷に住う蟲柱 胡蝶しのぶによれば眠柱は柱の中でも1、2を争う変わり者だと言う。
『胡蝶様、その変わり者って、どういう?』
『……自分の目で確かめる方が早いですよ』
『え、今、すっごく間があったんですが』
『仕方ないです。任務なので』
しのぶは美しい顔立ちで惜しみ無く笑ってくれた。しかし明らかに答えにはなっていない、その返答はむしろ不安を大きくする。そんな中で、は指定された場所まで向かうしかなかった。
◆
人のいる里からやや離れた森の側、ちょうど大きな一本杉が立つあたりが待ち合わせ先だ。隊服を着ているからすぐにわかった。渦中の人物は既に到着している。
どちらかと言えば大人しく落ち着いている。女性と言われれば頷ける程、全体的に線が細く“しなやかさ”がある印象だ。年の頃までは読めないが顔立ちも小綺麗であるし 実に中性的な人だった。
しいて物珍しいのは2点。隊服の上には羽織ではなく、黒く長めの洋装のものをまとっていて、そして何よりも おそらくは左利き。剣士にしては珍しく刀の鞘が右側にある所だ。
それ以外は、何もおかしな風体はないように感じた。
異常な程傷だらけの風柱や尋常を超える筋肉むきむきの音柱の方が、よほど“変わり者”に思えた。
まがいなりにも、彼は上官にあたる。は急ぎ足でそこへ近付き、深く頭を下げて挨拶をした。
「眠柱様でいらっしゃいますね。お待たせして申し訳ありません!」
「ああ、今日の任務のコ?」
「はい。階級“丁(ひのと)” と申します。」
「よろしくね 俺は眠柱の魘夢」
側にいるとほんわり毒気を抜かれるような、表情に負けず口調もふわふわと柔らかい話し方をする。その感じはほんの少しだけ、お館様にも似た独特の空気感がある。