第3章 夢見事/魘夢/魘夢にベタ惚れ鬼夢主/微甘/※グロ
それから数分も経たぬうち、車両の扉がそっと開いた。車掌の見回りか何なのか微かな明かりと、コツコツ静かな足音が近づいて来る。
「ヒっ…………な、……?!?!」
ごとんと、床に灯りが落ちた。車掌は思い切りこちらを見ながら、ガタガタ肩を震わせ転んだ尻もちのまま後退りをする。女の腹の間からくごもる舐めた声がする。
「逢瀬の最中なんだけど。無粋だなぁ」
人間の反応は最もだろう。
そこはまるで地獄の沙汰だ。
死顔の女に跨がり、腹部に顔を埋める鬼の様は欲のままに屍肉を喰らい 屍姦を楽しむ姿みたいだ。座席や床にまでぼたぼたと臓器の欠片が散らばっている。生臭く鼻孔を刺す臭いは吐き気を催すくらいに強烈だった。
「な、…………き、貴様…………ッ、その、……その人、は……っ」
「あー彼女?大丈夫、放っておけばすぐに治るしそのうち起きるから」
鬼は一度だけ、大切そうに女の額を撫でていた。言葉の通りだ、物理的に気絶しただけでを殺す気は少しもなかった。
今夜の自分は我ながらえらく優しいと思う。彼女の望み通り、彼女にとっての夢を見せながら自分自身も腹を満たしていただけだ。
ガクガク膝を震わせる件の人間へ身を寄せる。そして、差し出すのは左の手だ。
「悪夢は嫌でしょう?」
「……は、……?!……ッ」
「いい夢をみせてあげる。最高に幸せな夢を」
「……な、なに、を……ッ」
「さぁ、お眠りィ」
これでおかずも用意出来た。
そしてまた、食事の続きだ。
終