第3章 夢見事/魘夢/魘夢にベタ惚れ鬼夢主/微甘/※グロ
「………っ、………ガ………」
どこか予感はあった。
唇の端から頬の中ほどまで、ぶちんと肉を噛み切られる音と焼けるような痛みがある。耳や喉にどくどく流れる自身の血が稀血の香りを濁してゆく。
「……俺たち鬼は毎日のように人間を喰らっているのに、どうして鬼の血はこんなにも不味いのかなぁ」
魘夢は一旦頭を起こす。
薄ら笑う唇から顎先までも、の血で真っ赤に塗られていた。伸びてくる指が傷口に触れる、いや、傷口の最奥に 眼球が下から飛び出るくらいの力で二本指を思い切り突っ込まれた。
「ヒ…………ッ……………、」
頬の骨が軋み、顔が中心から張り裂けそうな痛みだった。生理的に身が硬直するし、瞳が真っ赤に充血する。指先がびくびく震えてしまう。
「痛い?……痛いよね、俺の指ごと癒着したまま修復しようとしてるけど、君じゃあ俺を取り込む事は出来ない。壊れて壊れて無意味に治して、その繰り返し……」
「………ッ、………」
「うふふっ いいね スゴく。素敵な表情」
「………ッ、………」
「可愛いなぁ 鬼のクセに」
掠れそうな声色でそう囁きながら、魘夢は邪悪に顔を歪ませる。再度こちらに身を寄せてくる。
に埋まる指を抜くと、今度は両手での襟元にのリボンを解きにかかる。ボタンを乱し服を裂かれると匂い立つ女の身体が露わになる。
彼の片手がそっと、頬から首筋、鎖骨、胸、乳首、その下にまでゆっくりと流れてゆく。心臓の少し下、そこでぴたりと手が止まる。
「」
このタイミングで甘く優しく名前を呼ぶなんて。夢を見ているような錯覚をおこす。いや、これは彼が“彼なりに” に見せてくれている夢なのだろうか。
魘夢の頭が、一直線にの腹に向かう。
「おやすみィ。いい夢を。」
一瞬だけ、口付けみたいに腹部に唇が触れた。
その感触を得た後はすぐに、膨れた腹を左右に容赦なく引き裂かれた。胃の中からは溶けかけた肉片がどろどろ止めどなく 次から次から溢れてくる。豊潤な血の香りと腐った鬼の血肉臭、それらが混ざり合いその場に強い異臭を放つ。