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〈短編〉鬼滅の刃 御伽噺

第3章 夢見事/魘夢/魘夢にベタ惚れ鬼夢主/微甘/※グロ


押し倒された身の上に覆い被さる魘夢は、の顔に乗る血へ一気に舌を押し付ける。それは少しだけ暖かいし まるで情のある愛撫、そんな真似事みたいで勝手に気分が高まり、つい彼の背に両腕を回してしまう。


「……なにかなぁ。それ」

「……わ、わたし……」

「ん〜?なあに?」

「……わ、わたし、は……」

の腕をそっと押さえ返す彼の左手は、ぐちゅぐちゅ雑な音を立てながらの髪に染みた血を味わっている。

きっと言うべきではない。こんな展開は鬼を狂わせる稀血のせいだ。わかっていても高揚感が勝り正しい判断がわからなくなる。


「私、……“人間だった頃”にあなたに会いたかった……っ」

「本当に変なコだね……俺の餌になりたいの?」

「なりたい……あなたの役に立ちたい、……あなたに夢を見せてもらえる人間が羨ましいし憎いっ……」

「君が鬼だからこそ こうして夜の旅を共に愉しめるのに」

「あなたは、少しも、愉しんでなんかない」

「口、開けて」


会話をぶつりと遮られた。

互いの鼻の先がぶつかる距離感で見下ろされる中、要求を断れる筈がない。彼の口元は相変わらず柔和だが、に圧をかけるよう瞳だけが思い切り細くなる。

はゆっくり唇を開ける。

そこに向かい、長く舌を差し出してくる魘夢に応えるようますます口を大きくした。滴る唾液を受け取るよう、自らの舌を控えめに伸ばして見せた。


「…………………え、魘夢」

「あーようやく呼んでくれたねぇ、名前。知らないのかと思ってた」


知らない筈が無いじゃないか。

何千も何万も、数えきれないくらい心の中で繰り返してきた。恐れ多くて大切すぎて、自分の口からは呼べなかっただけだ。

口内に潜り込む濡れた柔い感触は、意識を奪っていくようだ。執拗にうねりながら、何度もの中を味わう理由は 口中に残る稀血の余韻だろう。

そこにあるのはただの貪欲な衝動的欲求で、互いの歯がぶつかり擦れ合うくらいに乱暴で粗末なものだった。それでも、時折歯茎や唇の裏にきつく喰い込む彼の牙が、痛くもどかしく、切なくもなる。

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