Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
「じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
夜が明けて魔法使いたちがぞろぞろと起きてきた後、厨房からネロが朝食を運んできた。流石料理人というだけあって、栄養バランスの整った美味しそうなものが並べられた。それらを口へと運びながら、私は今後の兄の行動について耳を傾けていた。
どうやら北の国にオズを呼びに行くらしく、中央の魔法使いたちと共に出かけるらしい。
本当は私も同行しようかと思っていたのだが、あまりに寒い気候だというので、兄に止められてしまっていた。それでもエレベーターまではと付いてきていた。
カインがエレベーターを起動させると、彼らはそれに乗って北の国へと向かった。それを見送り、一緒に来ていたヒースクリフと魔法舎へ戻る。
「さて、賢者様たちが戻るまで、俺たちはゆっくりしていようか」
「そうだね……あれ?あそこにいる人たちって……」
魔法舎の入口に人影があることに気づいてそう口にすれば、ヒースクリフが私の前に進み出た。
「あれはグランヴェル城の……」
立っていたのはどうやらグランヴェル城の兵士たちのようだった。彼らの後ろには荷車が引かれており、私たちに気づいた兵士たちは慌てて頭を下げた。
「あの、こんなところで何を……」
「あぁいえ、昨日の騒ぎをお詫びをと、ドラモンド様から言付かって参りました。こちらは魔法使いの皆様でと……」
そう言って荷車に掛かっていた布を捲って私たちへと見せてくれる。そこに乗っていたのは籠いっぱいに詰まった果物や野菜だった。
「わぁ、すごいですね。ね、ヒースクリフ」
「……本当にあの人がそう言ったのか?」
「ほ、本当です!」
未だに信じきれないというように、ヒースクリフが兵士たちへ睨みつけるような視線を送る。兵士たちは慌てた様子で弁解するが、ヒースクリフは険しい顔のままだった。