Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
「うん、今はまだ見つからないかもしれないけど、茜にもこっちの世界での役目があるかもしれないし」
ヒースクリフの言葉に胸が締め付けられるような気がした。彼は単純に私を慰めるためにそう言ってくれている。けれど賢者のおまけな存在である私に役目があるとは思えない。
分かりきっていることではあるし、欠片のムルとの会話でしたいことを自分で見極めると決めたけれど、改めて口にされるとその決意が揺らいでしまいそうになる。
「……そう、だね。私にしか出来ないこと、あるといいな」
揺らいで崩れそうになる笑顔を取り繕い、私は笑みを見せた。
(そうだ。私はこの世界を知って、やりたいことを決めるって、そう言ったんだ。だったら少なくとも今はーーー)
揺らぎが治まったところで、私は空のまま置かれていた1番小さな籠を拾い上げた。その中にいくつかの果物を取り分けると、ヒースクリフと共に食堂へと向かった。
扉を開くと最初に人影が視界に映る。
「あっ」
「ん?なんだ、ヒースか……お前は誰だ?」
中に居たのは東の魔法使いのシノだった。入ってきた私たちを振り返って、ヒースクリフを目に留めるが、後ろから姿を見せた私の方へと視線を向けて眉をひそめてきた。
「昨日もヒースの傍に居たな。召使いか何かか?」
「ちょっとシノ!失礼だよ!」
「私はお兄ちゃん……賢者の妹で、茜と言います。あなたは東の魔法使いの……ヒースクリフの幼馴染のシノさんですよね?」
「あぁそうだ。オレはブランシェット家に仕えてる。ヒースはそこの息子で、俺が遊び相手になっていた」
淡々と話すシノは終始無表情だった。隣に立つヒースクリフはどこか居心地悪そうにしていたので、私は気になっていたことを口にする。
「その、ヒースクリフとシノさんは友達だって聞きました」