Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
(って、私ってば何想像してるんだろう……そこらじゅうイケメンだらけで気がおかしくなったのかも……)
変な想像をしてから我に返り、両頬をペシペシと叩いて気を戻す。カインは未だに不思議そうな顔をしており、私は苦笑を浮かべてしまった。
(うーん、でもやっぱりイケメンはイケメンだ……)
部屋に戻るからと彼の上着を返そうとすれば、戻るまでも寒いだろうから後で返してくれればいいと言われた。なので私はお言葉に甘えてそのまま自室へと戻った。
その途中、一度厨房に寄ると、朝食作りを始めていたネロからリンゴを貰った。先程のミルクのお礼だというので、どうやら飲んでくれていたらしい。
兄のカップがきちんと洗われて棚に戻されているのを見て、私は軽く笑みを浮かべて部屋へ戻った。
手にしていたリンゴはひとまずベッド脇のテーブルに置いておき、カインの上着を脱いで綺麗に折り畳む。そして自身の上着のポケットに入れて置いたパープルサファイアを取り出すと、リンゴの横に並べた。
(そういえばこの欠片、いつもポケットに入れているんじゃ、失くしちゃうよね)
何かあった時のためーーー今の自分にはその何かはよく分かっていないがーーーなるべく持ち歩くようにはしているが、そのままポケットに放り込んでいるので、いつか失くしてしまうのではないか。
けれどムルにとっても私にとっても大事なものではあるので、出来れば持ち歩いていたい。
(……あとでヒースクリフに相談してみよう)
窓の外から鳥のさえずりがきこえてきた。朝日が顔を出し、魔法舎を照らし出す。その眩しさに目を細めながら、私はひとつ深呼吸をすると、兄を起こしに行こうと部屋を後にした。