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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い





階段を降りて厨房へ向かうと、ふと厨房から光が漏れていることに気づく。



(明かりが付いている?誰か起きているのかな?)



そっと中を覗いた私と、丁度こちらを振り向いた相手の視線がぶつかった。



「あ……」

「ん?誰だあんた……いや、確か昨日賢者さんの後ろに居たような……」

「真木茜です。晶の、賢者の妹です。ええと……東の国の……ネロさん、でしたっけ?」



中にいたのは東の魔法使いのネロだった。こんなにも早く起きているなんて、相当早起きだと思う。けれど料理人ともなれば下準備などで早起きすることもあるのだろうか。



「朝食の準備ですか?」

「まあな。料理人だからって頼まれてさ」



野菜の入った籠をテーブルに置きながら、彼はそう答え、再度私へと視線を移す。



「あんたも随分早起きなんだな。それとも眠れなかったのか?」

「目が覚めてしまって……あの、何か飲み物をいただいても……」

「ん、あぁ。別に俺の厨房じゃないから、あんたの好きにするといいさ」



そう言って彼は籠の中の野菜を吟味し始めた。人参のような見慣れた野菜もあれば、少し形の変わった野菜もあって、彼は手際よくそれを選別していく。

私はそれを横目に棚に置かれていたミルク瓶を手に取る。ついでに小さな鍋も手にすると、ミルクを鍋へと注ぎ、火をつけた。

ふつふつと煮立つミルクの香りが厨房に広がり、横で野菜を洗っていたネロがこちらを向いた。



「あんた、賢者さんの妹って言ったな。異世界から召喚されるっていう賢者の身内が、なんでこんなところにいるんだ?」

「……それは……」

「……いや、変な事聞いて悪かったよ。あんたにも色々事情があるんだろうし、余計な詮索はしない。俺も面倒なことに巻き込まれるのは御免だし、さっきのは忘れてくれ」

「そうですか……」




鍋を火から下ろして自分のカップへとミルクを注ぐ。それからちらりとネロの方を伺い、隣に置いてあった兄のカップへもミルクを注いだ。


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