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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い





早足で魔法舎の中に戻ると、丁度アーサー王子と入れ違いになった。彼は"ゆっくりおやすみください"と言って中庭へと歩いていく。そうして兄の姿を見つけて駆けよれば案の定、どこに行っていたのかと言われてしまった。



「少し風に当たりたくて……黙って出ていってごめんなさい」

「うーん、確かにあの空気は少し居心地悪かったかも……仕方ないかぁ……」

「今度からはちゃんと伝えてからにするから」

「約束だよ?」



ぐしゃぐしゃと頭撫でられながら、私は窓の外に見えたアーサー王子の姿に視線を移す。中庭に立つ彼の後ろ姿はどこか寂しげだった。

きっとオズのことを考えているのだろう。オズの名前が出る度に彼はそわそわして落ち着かない様子を見せていた。

決して仲が悪い訳では無い、恐らくはその逆だ。けれど見えない壁と距離があって感情が渦巻いている、そんな状態なのだろう。



(オズ……今どこにいるんだろう……)



私を助けてくれたあの夜から一度も姿を見ていない。北の魔法使いと賢者の書にかかれていたということは、彼は北の国に戻っているのだろうか。



(ううん、今の私が彼のことを考えてもどうしようもないものね)



ふるふると首を振って私は賑やかな魔法使いたちへと視線を戻した。

明日から彼らとの生活が始まる。どんな未来が待ち受けているか今はまだ想像もつかない。



ーーこの世界の真実を、あなたに見つけてほしい



こちらの世界に来る時にエレベーターでムルに言われた言葉がよみがえる。



(真実を見つける……運命……)



まだまだ知らなければならないことは沢山ある。自分の答えも見つかっていない。それでも今はこの世界で生きなければならない。



(……不安だらけだけど……やるしかない)



覚悟も中途半端でしかない。だけどこの世界に任せてみるのも案外いいのかもしれない。そう、思うのだった。


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