Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
「それをあなたは私に言ったんですか?」
『まさかそちらへ通ずるとは思っていませんでしたから』
やはりムルはいつの間にか私の魂に運命が無いことを伝えていたのだ。だからあんな言葉が勝手に出てきてしまったのだ。
『そして分かれ道はこの世界においてあなたが辿る運命のことです』
「運命が無いのにですか?」
『では友人を賢者様に置き換えて考えてみるとどうでしょう。本来通るはずではなかった道、つまりこの世界にあなたは賢者様によって連れ込まれた。正確には巻き込まれた、というのが正しいですが』
「……それじゃあ、その2つの道というのは……」
『あなたが"通らざるを得ない"、運命の道です。どちらも本来の運命から外れた道なので、あなたはこの世界の運命に巻き込まれたことになるわけです』
「巻き込まれた運命に関わって自分の望む未来へ変えるか、運命に関わらずこの世界の混沌に苦悩して幸運を掴み取るか……」
『そういうことです。ですから勘違いだと私は申し上げました。あながち間違いとも言えませんが、それはあなたの心が決めることですから』
(……どちらを選んでも、結局巻き込まれることに変わりはない。私はどうするべきか、そんなものすら決まっていない。でもムルは私にどうしたいか、と言った。どうすべきかではなく、どうしたいか。……なんでだろう。あれほど役に立つために何かをしたいって決めたはずなのに。今になって怖くなってきた……)
私の未来は確立していない。いくらでも変えようがあると考えれば喜ばしいことだが、逆に考えれば灯りも持たずに暗闇の中を歩んでいかなければならないということだ。