Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
「次、ヒースクリフ」
自分のことはもういいとばかりに、ヒースクリフへと番を回す。
「あ……はい。東の国の魔法使い、ヒースクリフです」
「ヒースは年が近かったから、よく一緒に過ごしてた。後で紹介します、アーサー殿下、リケも」
「次、順番に」
「じゃあ俺から……ネロです。えー……以上です」
「馬鹿なの。それだとなんの情報も手に入らないだろ」
同じような自己紹介をしていたにも関わらず、ファウストは苛立ったような様子を見せた。それに対してネロという魔法使いは呆れたように続きを口にした。
「えーと、東の国で料理屋やってました。そういうわけなんで、早く帰りたいんだけど……。〈大いなる厄災〉が来るのは年に一度だけだろ?その時には必ず顔を出すようにするよ。悪いけど、そういう感じでいいかな」
「構いませんよ。今までも賢者様以外は外で暮らして、迎撃の際にだけ集まっていましたし……」
(そっか……彼らが賢者の魔法使いとして働くのは、〈大いなる厄災〉の時だけ。それ以外に役目を果たす必要は特にないってことなのね)
年に一度の〈大いなる厄災〉。その迎撃のために集められた魔法使いたちの仕事は、〈大いなる厄災〉が来る時だけ。それも年に一度きり。賢者の魔法使いに選ばれたのだとしても、〈大いなる厄災〉が来ていないのであれば、賢者の魔法使いとしての役割は無いに等しいのだろう。
けれどそれを聞いていたカインがシャイロックの言葉を遮るように言った。
「いや、待ってくれ。これは改めて話し合おうと思っていたんだが、みなも知っての通り、今回の〈大いなる厄災〉の力は強かった。そのせいで10人の仲間が石になった。同じ悲劇を繰り返さないよう、計画的に修行して、作戦を考えて、組織力を高めよう」
「……つまり?」
「ここで皆で生活しながら、〈大いなる厄災〉の襲撃に備えるんだ」
「……」
スノウとホワイトは良い案だと言うが、東の魔法使いたちは嫌な顔を隠そうとしない。人嫌いな彼らは他者との関わりを極力もちたくないのだ。このような場所で共同生活をするなどもってのほかだ。
「オレは構わない。雨風がしのげればどこでも寝れる」
ただ一人、賛同する者がいたことだけを除けば。