Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
「そ、そうですね。そう思います」
間違いを訂正して良いものかと迷う兄は口角をひきつらせながらそう答えたが、その場で訂正しなかったことを後悔することになろうとは思ってもいなかった。
「良かった!では早速合コンをしましょう。賢者様は合コンはお好きですか?」
「ええと、その、どうでしょう……」
(そんな質問されて普通に答えられるわけないものね……)
「人と魔法使いの輪を深めること……それ自体、人と魔法使いの合コンと言えるかもしれません。いずれは国を上げて、合コンの日を定めて、民の祝日にすることも考えています」
あまりにも真剣なアーサー王子に、これは訂正しそびれたとばかりに兄が冷や汗を垂らす。
「ではひとまず、目の前の合コンをみなで楽しみましょう」
兄が私の方へ救いを求める視線を向けた。けれどあそこまで真剣なアーサー王子に、今更意味が違うなどと、しかも本当の意味は尚のこと伝えにくい。
合コンの準備をと魔法使いたちに声をかけて回るアーサーを眺めて、私は苦笑を浮かべる。
(何も知らない魔法使いたちが気の毒ね……)
現状、合コンの本当の意味を知っているのは私と兄だけだ。仮に私たちが元の世界へ帰ったとして、次にやってくるのが同じ日本人とも限らない。それならば無理に訂正する必要なないようにも思う。
(待ってでも、もし次の賢者が本当のことを伝えたら?それこそアーサー王子に恥ずかしい思いをさせてしまうんじゃ……)
「お兄ちゃん、後でこっそりアーサー王子に説明しよう。私もフォローするから」
「そ、そうだね……」
ひとまず今のところは黙っておいて、あとできちんと説明すればいい。その前に合コンという言葉がこれ以上広がらないことを祈る必要はあるけれど。