Fleeting promise【魔法使いの約束】
第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い
ーーー日本人のサラリーマン?
ーーーうん。書いてあることからして多分あまり良い職場環境じゃなかったみたいだけど
ーーーその人もまさかこんなことに巻き込まれるんて思ってなかったでしょうね
兄から聞いた前の賢者の話。書庫に置かれていた賢者の書にはこの世界のことだけでなく、手記として本人に通ずるようなことも書かれていたという。
話を聞く限り、書かれている内容からして前の賢者は楽観的な性格をしているようだった。勘違いをして兄を不安にさせるような記述をしては、間違いと気づいて何事も無かったかのように開き直ったり。魔法使いたちのことをオブラートに包むわけでもなく、はっきりとその性格を書き留めたり。兄とは大分性格が違うようだ。
「あの、お伺いしてもいいですか?合コンとはどのような……」
「これは失礼いたしました。前の賢者様から伺っていたので、賢者様もご存知かと」
(ご存知というか、合コンってあの合コンのことを言ってるの?)
この状況下で合コンをしようと切り出すのはどう考えてもおかしい。けれどアーサー王子は至って真面目な様子だ。合コンの意味を分かって言っているのか、それとも別の思惑があるのか。けれどそんな私の不安は杞憂に終わった。
「合コンとは出会いを祝福する宴です。今夜にとてもふさわしいと思いませんか?」
(……えっと……あながち間違いじゃないけど……)
(前の賢者、うまいこと言ったな……これは訂正しづらい……)
まさか違った意味で元の世界の言葉を使っていたとは。これが前賢者の楽観的な性格が引き起こした結果だ。
確かに男女の出会いを祝福するような意味としてでは似てはいる。けれどこの出会いを合コンと呼ぶのはどうなのだろうか。