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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第3章 友達と呼ぶにはまだ遠い




「賢者様、ご期待に添えず申し訳ありません」

「……いいえ、気にしないで。あ、本当のことを言うと、帰りたくて仕方なかったんですけど」



苦笑いを見せた兄の視線がこちらを向いた。その視線に気づいたアーサー王子もこちらを向く。私は慌てて椅子からおりるとぺこりと頭を下げた。にこりと微笑まれて、改めて王子という存在に身震いする。



(あの人からは嫌なものを感じない。それだけ真っ直ぐで裏表のない人なのね)



「アーサー殿下!一通り、魔法舎の片付けが終わりました」



そこへクックロビンさんが駆け寄ってきた。再び椅子に腰かけながら周りを見るとあれほど荒れていたところが綺麗に片付いている。アーサー王子が箒で空へ飛び上がると不思議な言葉を紡いだ。



「《パルノクタン・ニクスジオ》」



夜の道に灯りが灯り、兵士たちの帰り道を明るく照らす。室内へ戻ってきたアーサー王子と兄にクックロビンさんは頭を下げた。

そんな彼らを見送ったところで、不意に肩を叩かれた。



「茜、体は大丈夫?もう遅いし休んだ方がいいんじゃ……」



いつの間にか落としてしまっていた上着を拾って差し出しながら、ヒースクリフがそう尋ねてきた。上着を受け取り肩に羽織りながら私は首を横に振った。



「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ」

「本当?あまり顔色が良くないように見えるけど……」

「さっきの騒動で体が少し驚いているだけで、今はだいぶ落ち着いたから」

「それならいいけど……」



それでも心配そうな視線を送ってくるヒースクリフに、微笑んでみせる。本当は少し調子が悪いのだけれど、いくら体が弱いとはいえそんなにも心配されると逆に言いづらいのだと、優しいヒースクリフには言えなかった。

とはいえ、倒れたりしてしまうほどではないので、こうして座っていれば問題は無い。けれど騒動も落ち着いたので今日はお開きかと思っていた時、妙な言葉が聞こえて、襲いかけてきた私の眠気は一気に吹き飛んだ。



「それでは合コンをしませんか?」



(…………え?)


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