Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
「晶様に茜様。よろしくな。まずはこいつらをなんとかしよう」
そう言って剣を引き抜くカインという青年。兵士たちの間にざわめきがおこっているが、ドラモンドが命を出すと彼らは一斉にカインへと襲いかかった。だが彼は余裕の表情で兵士たちを叩き伏せていく。
私たちがその剣さばきに見惚れていると、誰かが兄の腕を引いた。
「東の国の魔法使い、ヒースクリフです。ついてきてください」
美形の青年につられて私たちは螺旋階段を下り始める。
だがヒースクリフの顔色があまり良くないことに気づいた兄が声をかけると、彼は額を抑えてよろめいた。肩で息をするように彼は"もう魔力がほとんど残っていないんです"と口にする。
見上げた階上にいるカインも相当疲弊しているようだ。そして彼の脇を抜けてきた兵士たちが迫ってくるのに合わせて、階下からも兵士が押し寄せてくる。するとヒースクリフは胸元に手をかざし、どこからか出した懐中時計を握りしめた。
「《レプセヴァイヴルプ・スノス》」
そして彼が不思議な言葉を唱えると、兵士たちの動きが一斉に止まる。私たちは不思議な光景に唖然としてしまうが、ヒースクリフは目眩を起こしたように膝をついてしまった。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
私がそう尋ねると彼は頷いて立ち上がった。顔色が先程よりも悪くなっている。よく分からないがきっと今の不思議な力で相当消耗してしまったのだろう。
「ヒース、無事か!?」
「……っ、大丈夫!」
再び階段を駆け降りようと兵士たちの間にを抜けるが、兵士たちの指がピクリと動いたかと思えば、彼らの静止が一気に解けた。
「きゃっ……!」
「茜!」
すぐそばに居た兵士が私の腕を掴む。兄がこちらを振り返って手を伸ばすが、他の兵士たちが彼らを囲いこんだ。