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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第1章 壊れかけの世界




「茜、逃げよう!」

「……うん!」

「力づくでも来ていただきますぞ!おまえたち!」

「……!」



手を引かれてその場から逃げようとすると、たくさんの兵士たちが私たちの周りを取り囲んで剣を引き抜いた。

兄が庇うようにして私を抱きしめてくれるが、偽物とは思えない輝き方をする刃に、私も兄も震えが止まらない。見上げると真っ青になった兄の表情が伺える。

だがふいにその顔が驚いた表情へと変わり、彼と同じ方へ視線を向ける。そこに見えたのは、大きな月と夜空。そしてこちらへ向かってくる二つの影だった。



(空を……飛んでるの……?)



二つの影は窓を抜けて私たちの前に降り立つ。

ひとりは左右の目の色が違うオッドアイで、騎士のような姿をした背の高い青年。もうひとりはとても綺麗な顔立ちをした美青年。

彼らはドラモンドたちの方を見据えて言った。



「お前の言った通りだな、ヒース。まさか魔法管理省のやつらが、賢者をさらいに来るとは」

「言っただろ。……人間たちは俺たちを信用しない」



(魔法……賢者……?)



「あんたが新しい賢者様か?……って、あれ?賢者が2人?そんなはずないんだが……」



こちらを振り返ったオッドアイの青年は、兄が抱きしめる私の存在にも気づき、驚いた様子を見せた。それから兄と私の顔を交互に覗き込み、それから反対側に立つヒースと呼ばれた青年に尋ねる。



「どうする?両方に来てもらうか?」



問いかけられた美形の青年は、オッドアイの青年の言葉に私の方へも視線を向け即座に頷いた。



「よし。俺は中央の国の魔法使いカイン。あんたらを守る騎士でもある。あんたらの名前は?」

「あ……晶です……。こっちが妹の……」

「 茜、です……」

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