Fleeting promise【魔法使いの約束】
第2章 運命を持たぬ者
「南の魔法使いのルチルです。みなさん、よろしくお願いしますね」
「南の魔法使い、ミチル!偉大な魔女チレッタの息子ミチルです!ごほん、お見知りおきを」
「……レノックス。南の魔法使いだ。よろしく」
「南の魔法使い、フィガロだ。どうぞ、よろしくね」
全員石になったと言っていた南の魔法使いたちの代わりに、新たに選ばれた4人の魔法使いたちを見て、私は胸の奥がチクリとするのを感じた。彼らは4人選ばれたことで、先代の南の魔法使いが全員死んでしまったことを知っただろう。
一体今、彼らはどんな気持ちでここへやって来たのだろうか。魔法使いたちを召喚した賢者のことを恨んでいるのだろうか。仲間を守れなかった生き残りの魔法使いたちを憎んでいるだろうか。
南の魔法使いは優しいと聞いているから、そんなことはないと信じたい。信じたいけれど、きっと彼らの心の中の悲しみは消えていないはず。
(戦いをこの目で見たわけじゃないけれど、すごく、悲しい……)
胸元で拳を握りして扉が閉まるのを目の端に入れながら、南の魔法使いたちの顔を一瞥した。
またエレベーターの扉が開く。ここまででやって来たのは9名。残るは中央の魔法使い1人のみだ。
「中央の魔法使い、アーサー。賢者様、よろしくお願い致します」
(中央の……アーサー……って、お兄ちゃんとカインが言っていた……?)
元の世界への帰り方を知っているかもしれないという中央の国の王子様。そんな彼が賢者の魔法使いに選ばれたというのか。