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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第2章 運命を持たぬ者





はっと顔をあげた時だった。シャイロックの胸から炎が上がっているのが目に留まる。彼の紋章があるあたり、ちょうど心臓の部分だろうか。胸元を抑えて蹲るシャイロックは、苦痛に顔を歪めながら言葉を絞り出す。



「……っ、……心臓が、燃えてるっ……」

「どうやらいよいよ、〈大いなる厄災〉の影響のようじゃの」

「!やっぱり、〈大いなる厄災〉と戦った皆さんが、何か呪いのようなものを受けてしまっているんですね?」

「おや、気づいておったのか」



私の言葉にホワイトが視線を向けてきた。私はふるふると首を振ってから先程辿り着いた考えを口にする。



「カインの目の様子がずっとおかしかったので考えていたんです。彼が他人を認識できなくなったのは、〈大いなる厄災〉と戦ってからでした。だから恐らく原因はその直前に起きたこと、〈大いなる厄災〉との戦いじゃないかって思ったんです。それにカインのように妙なことが起きているのはブラッドリーさんと……スノウさんホワイトさん、〈大いなる厄災〉と戦った方々です。だからきっとそうなんじゃないかって……」

「この短時間でよくそこまで理解出来たものじゃのう。そなたの言う通りじゃ」

「我ら、〈大いなる厄災〉と近づきすぎた。昨夜の戦いで、見えぬ傷を負ったのじゃ」

「傷……直接的なものじゃなくて、魔法使いの内側……魂とかですか?」

「その通りじゃ」

「どうすれば……」

「くうっ……」



シャイロックが苦しそうに呻く声が聞こえる。心臓が燃えるなど、一体どんな痛みなのだろう。決して味わいたくない感覚を思い浮かべた時、兵士たちの雄叫びが響いた。



「賢者様、下がってください!お守りします!茜も俺から離れないで」

「ヒース!シャイロックを……スノウ様とホワイト様も頼む!」

「分かっ……お、多くない!?」


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