Fleeting promise【魔法使いの約束】
第2章 運命を持たぬ者
食堂までやってきた私たちが見たのは、魔法使いたちに取り囲まれて必死に弁解しようとしている男の人だった。
(この人……ドラモンドさんと一緒に居た……)
「たしか、書記官のクックロビンさん」
「そう!そうです!」
身元を問われたクックロビンさんは兄の言葉にぶんぶんと首を縦に振った。
ヒースクリフにここへ来た理由を聞かれると、彼は散歩に…と視線を逸らしながらそう呟く。けれど私でも分かるぐらいの言い訳だ。
「魔法使いに嘘が通じると思わない方が良いですよ」
「すみません……!」
実際は大臣のドラモンドさんから、賢者である兄を魔法舎の外におびき出すよう言われてきたらしい。賢者さえいればあとはどうにでもなると思っているようだ。
クックロビンさんは眉尻を下げながらも、本当はこんなことをしたくないのだと告げる。けれどドラモンドさんの気持ちも分かるのだと、その表情はとても複雑そうだった。
魔法使いが怖いのだと言う彼の言葉は、自分でもどうして良いのか分からないといった様子だ。
「で、どうする?」
「スノウ様とホワイト様に相談しよう」
ともかく現状の対処が最優先で、カインが双子の意見を聞こうと口にすれば、ムルが楽しそうに額縁を差し出した。それはスノウとホワイトの絵のようで、皆が首を傾げる中、二人の声が響いた。
「昨晩と同じじゃ」
「絵の中に閉じ込められてしもうた」
そういえば昨日の夜にもそんな話を聞いた気がすると兄が呟いた。
カインたちもてっきり冗談だと思っていたらしいのだが、絵の中では魔法も使えず、額縁の中から抜け出そうとしても影が絵の中に繋がったままのようで、何か呪いでも受けたのではと言うヒースクリフの言葉に双子は何か考え込んだ。