Fleeting promise【魔法使いの約束】
第2章 運命を持たぬ者
ロビーに集まりつつある魔法使いたちを眺めながら、私は隣に立つヒースクリフの顔を見上げた。さっきはあんなことを言ってしまったが、今は平然としている彼の様子に、流石だなぁと思ってしまう。
だが彼は私の視線に気づいたのか、こちらへチラリと目を向けるが僅かに頬を染めて視線を逸らしてしまった。
(……普通に気にしてた……)
案外、彼は社交的な人ではないのかもしれない。それを思うと何だか可愛く思えてしまい、つい笑みをこぼしてしまう。するとヒースクリフは頬をかきながらまた私の方へと顔を向けてきた。
「さっきはすみませんでした……あと、俺のことはヒースクリフで良いですよ。敬語も要りませんから……その、友達ならその方がいいかと思って」
「それもそうですね、友達なのに敬語は変ですし……じゃなくて、変だよね。それじゃあヒースクリフも私のことは敬語を使わないで呼んでほしいな」
「分かりまし……えっと、分かった。……何だか変な気持ちがするな」
「変?」
「カインやシノとはこんな風に話しても気にならないのに、君と話す時はこの辺りがなんだかむず痒くて」
そう言ってヒースクリフは胸の辺りを手のひらで抑えた。その理由が彼には分かっていないようだったが、その感情の意味を私は何となく察していた。
「ヒースクリフは女の人と話すことは多いの?」
「ううん……家族や使用人ぐらいとしか話さないからあんまり……」
「だからじゃないかな。きっと女の人と友達になることに慣れてなくて、それで少し恥ずかしいのもあるのかも。私もお兄ちゃん以外の男の人と話すのは少し恥ずかしいし」
「そっか……」
「では、儀式を始めようかの。やり方は儀式をしながら教えよう。OJTじゃ」
スノウとホワイトが前の賢者に教えてもらったらしい言葉を使いながら、兄をロビーの中央に連れ出した。