Fleeting promise【魔法使いの約束】
第2章 運命を持たぬ者
(オーエン、あの人は何を考えてるのかよく分からない。気が乗ってくれれば、って感じだけど……。ブラッドリーはまだ話を聞いてくれる方だし、スノウとホワイトは友好的だから心配ないと思う。あとは……)
もうひとり、北には魔法使いがいたはず。先程兄と見た賢者の書の名前を思い出す。
(そうだ、ミスラっていう人……)
「あの、ミスラという魔法使いはどうなんですか?」
「そうだな。死者を操ることができるんだが、とにかく野性的なやつだ。見た目に騙されない方がいい」
「賢者の書にもそんなことが書いてありましたね……」
「あまり気にしなくても大丈夫だ。あんたが直接関わるわけでもないんだしな」
「それはそうなんですが、兄のことが心配で……」
カインの言う通り、私にとってはあまり深刻なことではないのだが、兄にとっては肝心なことであり、それを黙って見守るだけなのは嫌なのだ。
何も出来ない存在であるのなら、少しでも役立てるように動けるようにしたい。何もしないだけでいるのは絶対に嫌だ。
「あんたらは本当に仲が良いな」
またしても頭を撫でられて私は頬をふくらせてカインを見上げる。そんな私の表情を見て、彼は吹き出すと髪が乱れるぐらいに私の頭を掻き回した。
「きゃっ……カイン!」
「ははっ、茜は面白いやつだな!」
「いいから撫でるのはやめてください〜!」
私が必死に呼び掛けと丁度兄たちが食堂から姿を見せた。そして私とカインを見ると皆可笑しそうに笑いだし、彼らの様子を見ていた私もつい笑みをこぼしてしまうのだった。