Fleeting promise【魔法使いの約束】
第2章 運命を持たぬ者
「魔法使いがいつでもそばに居るわけでもないし、それがあった方が安心するだろうって」
「そんな気を遣わなくても大丈夫なのに……」
「それに今朝、賢者様にあんたの安全と健康を頼まれたのもあるんだ。お二人共自ら進んで用意してくれたぞ」
「……あの、おふたりは今どこにいますか?お礼を言いたいんです」
席を立ち上がってそう尋ねると、カインは『今は召喚の儀式の準備をしている』と答えた。
彼に案内されて向かった先で、スノウとホワイトが何やら道具を準備しており、私が歩み寄るとこちらに気づいて声をかけてくれた。
「おお、受け取ってくれたのじゃな」
「あの、私なんかのためにわざわざありがとうございます」
「これぐらいお易い御用じゃよ」
「おぬしが元気でないと賢者も心配するでの。それに、こんなにも可愛らしい子は我々にとって孫のようじゃからのう」
「可愛い孫はつい甘やかしてしまうものであろう?」
(前の賢者さんに聞いたのかな……そう言ってくれるのはとっても嬉しいのだけど)
ほっほっほ、と笑う双子に私はどう反応して良いか分からず曖昧な笑みを浮かべてしまった。
すると彼らは私の微妙な表情に気づいたのか、不思議そうな顔をしてからなにかを思い出したのか口を揃えて呪文を唱えた。
「《ノスコムニア》」
と、直後に彼らの姿が変化した。子供のように小さかった姿が一変、青年の姿になり私を見下ろす形となった。
彼らはニコニコと私を見つめていたが、私はというと突然のことに驚いて、その場にへたり込みそうになったところをカインに支えられていた。
「賢者と同じ反応をするのじゃな」
「お主を孫と言うても、我らが子どもの姿では変じゃからのう。だから大人の姿になったのじゃが、お主にも驚かせてしまったようじゃ」
「そ、そうなんですか……魔法って本当にすごいんですね」
「どうじゃ?子供と大人の姿、妹ちゃんはどちらが好みかの?」
「ええと……大人の姿もカッコイイですけど、子どもの姿も可愛らしくて……」
「カッコよくて可愛いだって」
「さすが我らじゃ」
顔を見合わせて嬉しそうにそう言う2人に、カインが可笑しそうに笑う。私は手にしたシュガーを見つめてから、再び双子へと頭を下げるのだった。